
この作品についてひとことで言うならば、「W杯開幕前に見とけ!」ということに尽きます。
わずか77分ではありますが実に見どころ満載で、過不足なくまとまったすばらしい作品でした(もっと長くてもいいくらい)。これを見てからW杯南アフリカ大会をTV観戦すると、ひと味もふた味も違った見方ができるでしょうし、ごひいきチームが早期敗退しても(笑)最後まで楽しめることでしょう。
この映画の存在を知ったのは、松崎康弘氏の「サッカーを100倍楽しむための審判入門」(←必読書!)で言及されていたから。以来、ずっと見てみたいと思っていた作品がこうして公開されたことは、本当に喜ばしいことです。
この作品には、ナレーションもモノローグも存在しません。そのときにあったことを記録し、ストレートに見せていくだけ。画面に登場するレフェリーの名がいちいち字幕で説明されることもありません。カメラは、試合中のレフェリーの動きを追い、ロッカールームやホテル、会議室の様子をレポートし、彼らの家族がTV越しに応援する姿をとらえていきます。
まず驚いたのが、レフェリーたちがつけているヘッドセットでの会話をそのまま聞けること! 彼らはどんな会話をしているんだろう!?とずっと疑問に思っていたので、長年の疑問への答えが見つかり、感動すらしてしまいました。試合を見ていると主審だけが目立ってしまいますが、副審や第4の審判を含めた「チーム」がレフェリーなんだな~と実感。
主審と副審は同国人からなるセットで試合に臨みますが、ヘッドセットでは何語で会話をしているのか、選手たちに話しかけるときは何語なのか……そんなこともしっかりわかります。ぜひぜひ映画で確認してみてください。
それにしても、レフェリーというのは何と過酷な職業でしょう。ひとつのジャッジがスタジアムの数万人の怒りと喜びを制御し、TV画面の向こうの数億人の感情にも火をつける……。それによって、まったく関係のない家族までもがとばっちりを受けることさえあるのです。
レフェリーの判定は、別の人間たちによって厳しく判定され、レフェリー自身の評価となって自分たちに戻ってきます。一瞬たりとも気が抜けない緊張感と、責任と孤独がレフェリーたちには常につきまとっているのです。
ユーロ2008はTVで見ていましたが、ハワード・ウェブのジャッジはあまり良くなかったという記憶があります。決勝トーナメントの笛が吹けなかったのも仕方がないかな~という無責任な感想の陰には、これだけの事実があったのですね……。実をいうと、あまり好きな審判ではなかったのですが、ちょっと見る目が変わってしまいました。
もちろん、レフェリーたちも日々切磋琢磨して進歩していきます。ユーロ2008では不本意な形で会場を去ったハワード・ウェブは、南アフリカではどんな審判ぶりを見せてくれるのでしょう。それ以前、土曜日に行なわれる「インテルVSバイエルン・ミュンヘン」のチャンピオンズリーグ決勝の笛も吹くそうですから、ぜひいいパフォーマンスを見せてほしいと思います。
それにしても、ロベルト・ロセッティさんはイケメンでした(笑)。
改めて、このような映画製作に全面協力するUEFAはスゴいな~という感想も抱きました。せっかくレフェリーについての映画を作るのであれば、その真実の姿を知ってもらおうととことん協力したのでしょうね。はたしてFIFAだったら、こういう作品をつくれるかな~!?とも思ってしまいました(FIFA協力映画といえば「GOAL!」シリーズですもんね~)。
◆おまけの感想◆
彼らのようなすばらしい審判たちと並んで、W杯には日本人の審判も出場します。ユーロに比べると審判の質が落ちるといわれているW杯ですが、そんな前評判を打ち破るような名ジャッジを見せてほしいですね。
ユーロやW杯では審判はヘッドセットを装着しますが、日本をはじめ各国リーグではあまり見かけません。予算の問題なのか、別の理由があるのかはわかりませんが、あの会話を聞いてしまったら「ヘッドセットがあるほうがいいジャッジができるでしょう!」と言いたくなります。これがあれば、昨年の「しね」事件の真相も判明したのに……というのはともかく、ヘッドセットナシでどうやって事態を収拾しているのか、逆に知りたくなったりして。
そうそう、東京サポさんには「ユルネバもあるので見て!」とひとこと言いたい!
- 関連記事
-
- 「ゲゲゲの女房」は面白い (2010/07/20)
- 「イナズマイレブン」にハマる(笑) (2010/07/06)
- W杯開幕前に見ておきたい映画「レフェリー」 (2010/05/21)
- 「石川直宏 まっすぐに平常心」 (2010/05/11)
- 「蹴球風見鶏」が本になる! (2010/02/24)

にほんブログ村