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「セカンドウィンドII」

前作から1年以上たって、ようやく「セカンドウィンドII」が出た。


セカンドウィンド〈2〉 (ピュアフル文庫)セカンドウィンド〈2〉 (ピュアフル文庫)
川西 蘭

セカンドウィンド〈1〉 (ピュアフル文庫) 丘の上の小さな街で―白鳥和也自転車小説集 (えい文庫 167) 自転車少年記―あの風の中へ (新潮文庫) 銀輪の覇者 上 (ハヤカワ文庫 JA サ 8-1) 弱虫ペダル 5 (5) (少年チャンピオン・コミックス)

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自転車好きの田舎の中学生・溝口洋が、自転車レースのエリート軍団「南雲デンキ自転車部」と出会い、才能を認められ、やがてロードレースに目覚めていく……というところで1巻目は終わっていた。

しかも、重要レースがスタートしたところで「以下続刊」だったのだ。読者は宙ぶらりんのまま時を過ごし、私などは記憶力がザルなので、ストーリーから何からすべて忘れてしまい、2巻目を読む前に自分のブログを見直したり(笑)、1巻目を探し出すのに悪戦苦闘したりしていた。連続ものの小説であれば、できれば1年以内に続刊を出してほしいものである。

そんなことはどうでもいいとして、第2巻である。

驚いたことに、第2巻が出るまでにかかったのとほぼ同じ時間が、小説の中でも流れていた。中学3年だった洋は、高校2年。しかも、エリート自転車部をもつ「南雲学院」の生徒である。才能が認められて特待生として入学できたのか、自力で試験を勝ち抜いたのかはわからないが、ともかくたいしたものだ。

年齢が少し大人になったせいか、主人公にも変化があった。今までは、自転車にさえ乗っていれば幸せという「自転車バカ」だったのだが、だんだんそう思えなくなってきてしまうのである。いってみれば「スランプ」だ。第2巻は、洋がスランプに陥り、そこから抜け出し、新たな光明を見いだすまでの物語である。

自転車青春小説としてもおもしろいのだが、ストーリーや自転車レースシーンの描写よりも個人的にインパクトを受けたのは、舞台となる「南雲学院」と、そこに集う人々のキャラクターだった。なんつーか、第1巻よりもより現実離れしていて、ものすごいのである(笑)。

南雲デンキは大企業で、自転車メーカーでもあり、自前の実業団チームももっている。周囲は企業城下町といった感じの広大なニュータウンになっていて、近くに海や険しい山もあれば、自転車レース会場になるような広大な公園もあるという恵まれた環境。エリート男子校「南雲学院」と、姉妹校の「清海女子学院」は、南雲デンキの経営だ。

その南雲学院は全寮制で、日々「ハリポタ」みたいな楽しい寄宿舎生活が繰り広げられている(笑)。中には飛び級で進学してきたひ弱な超エリートもいれば、会長の孫で非の打ち所がないイケメン自転車部主将もいる。

一方の女子高のほうには会長が溺愛する孫娘(美少女)はもちろん、きらびやかなお蝶夫人みたいな女生徒や、主人公の幼なじみのフツーにかわいい女の子がいるし、留学生としてカナダからは万能MTB選手がやってくる。とにかく主人公以外は皆さん個性派ぞろいなのだ。ホント、このままアニメにできそうな連中ばかりである(笑)。

自転車漫画だってここまで荒唐無稽な舞台はつくらないでしょ!という感じの設定なのだが、だからこそ、これだけ派手な自転車レースの場面ができるのだろう。リアルな設定をつくっていたら、もっとみみっちい話にならざるを得ないから。このくらい大風呂敷を広げてもおもしろいのだからオッケーなのだ。

全何巻で完結する話なのかは知らないが、「起承転結」でいえば第2巻は「転」ではないかと思う。大好きだったはずの自転車でつまずいて、苦悩の末に新たな希望を見出した洋はこれからどうするのか!?が、たぶん3巻目の物語。いや、もしかしたらまったく違うのかもしれないけど。

第2巻はひたすら学園もので、洋の出生にまつわるエピソードが何もなかった。3巻目ではそのへんも描かれるのかもしれない。いずれにせよ、早いところ3巻目を出してもらわないと。もしかしたら3巻目では洋はすでに南雲学院を卒業して、実業団で走ってるかもしれないけどね。
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コメント

ひっくり返りました!
そんなに凄い設定とは思いませんでした!!

まさにアニメ作品そのものですよ。それで面白いなんて・・・。

年月がきちんと描写されているなら,続編はサブプライムローン問題に端を発した世界経済危機に直面し,南雲デンキは選択と集中のための強力なリストラ策を断行,各実業団や自転車部などは規模縮小を余儀なくされてしまう。
激しい蹴散らしあいの中で生き残りをかける主人公の運命やいかに?
・・・と,言うことになりそうですね。

これではまさに「ちまちました内容」そのものなので,実業団をクビになった主人公は一か八かのヨーロッパ武者修行でプロに挑戦するということにしましょう。
nekki5149さま
nekki5149さん、コメントありがとうございます。

中学生や高校生のレースなんて、まともに描いていたらものすごく地味になってしまいますもんね。時代設定は特になかったと思うのですが、「今の日本によく似たどこかの世界」と考えるほうがいいのかもしれません(笑)。

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